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建設特定技能では、なぜ日本人の給料まで審査されるのか?「比較対象の日本人」の選び方を行政書士が解説
2026.10.30
特定技能ビザ
はじめに
建設特定技能受入計画を申請すると、外国人の給料だけでなく、御社で働く日本人の給料まで審査されます。賃金台帳や経歴書の提出を求められ、「なぜ日本人の給料まで見られるのか」と驚かれる企業様も少なくありません。
本記事では、日本人の給料が審査される理由と、比較対象とする日本人の選び方を、実務の経験を交えて解説します。外国人の給料の下限(最低賃金の1.1倍)については、別の記事「建設特定技能の給料は、なぜ『最低賃金の1.1倍』以上なのか?」をご覧ください。
※本記事は1号特定技能外国人を対象としています。
なぜ日本人の給料まで審査されるのか
国土交通省の通知(令和4年3月28日)では、比較対象とした日本人の給料について、次の2つが審査されます。
- 外国人の給料が、その日本人より不当に低くないか。外国人を日本人より安く雇うことを防ぐためです。
- その日本人の給料が、最低賃金の1倍を下回っていないか。下回っていれば、「適切な処遇や労働条件を示して国内で人を集める取組をしている」とは認められず、受入計画は認定されません。
2つ目は、外国人の給料をいくら高くしても、日本人の給料が低ければ通らないということです。ここに、この制度の考え方がよく表れています。
特定技能は、国内で人を集める努力をしても人手が足りない産業に限って、外国人の受入れを認める制度です。建設業はその代表です。外国人の受入れで現場が回るようになったら、その先は賃金や待遇を安定させ、雇用を維持していくことが求められます。
そして、待遇の改善は外国人だけが対象ではありません。そこで働く日本人を含めた全従業員の待遇を改善し、定着率を上げ、強い企業をつくる。その積み重ねで、建設業という産業そのものを立て直す。日本人の給料まで審査される背景には、こうした狙いがあると当事務所では考えています。
裏を返せば、日本人の待遇を改善できない企業は、この制度を使えないということでもあります。特定技能は、単に人手不足を外国人で埋めるための制度ではなく、待遇改善に取り組む企業を後押しする制度だと理解しておくと、審査の考え方が見えてきます。
比較対象の日本人の選び方
比較対象とするのは、外国人と業務内容・経験年数・資格などが最も近い日本人の技能者です。国交省の手引きでは、次の順番で選ぶよう示されています。
- 同じ職種で、経験3~5年の日本人技能者がいれば、その人と比較する
- いなければ、同じ職種の日本人技能者と比較し、給料の差が合理的な範囲内であることを説明する
- 同じ職種の日本人技能者もいなければ、比較できる日本人がいない場合の方法(後述)で説明する
なお、役員と、定年後の再雇用者は比較対象にできません。
なぜ「経験3年」が基準なのか
経験3~5年が基準になっているのは、特定技能外国人を「3年程度の実務経験がある人材」と同等に扱っているからです。技能実習2号を修了した人は、実際に建設現場でおおむね3年の経験を積んでいます。試験に合格した人は、実際の経験年数はさまざまですが、技能実習2号の修了者と同程度の技能水準があると評価された人です。
国交省の手引きでも、ハローワークの求人票が「経験不問・月給25万円~」の会社であれば、試験に合格した特定技能外国人には「25万円に3年分の昇給を加算した額」が必要と説明されています。この例からは、実際の経験年数にかかわらず、3年程度の経験者として給料を決めるという考え方が読み取れます。
実務では、同じ職種・同じ作業で、通算経験3年以上20年未満の日本人を比較対象にすることが多く、地方整備局によっては30年未満まで認められたケースもありました。一方、経験3年未満の日本人は、多くの地方整備局で比較対象として認められません。外国人より経験の浅い人と比べても、「同等の技能を持つ日本人」とは言えないためです。
経験年数は「自社と他社の通算」
比較対象の日本人の経験年数は、御社での経験だけでなく、他社で同じ職種に従事した期間も通算します。入社2年目の社員でも、前職で同じ作業を5年していれば、通算7年の経験者として扱えます。経歴書には、自社経験と他社経験を分けて記載します。
外国人の給料が日本人より低い場合
基準は「同等の技能を持つ日本人と同等以上」です。手引きでも、経験年数の差による給料の差は設けられるとされています。一方、日本語能力を理由にした給料の差は認められません。
では、外国人の給料が日本人より低くても認められることはあるのか。当事務所が以前、地方整備局に確認したところ、「低い場合でも理由がきちんとしていればよい。ただ、めったに認められないので、日本人と同等以上にするのが無難」との回答でした。
当事務所でも、外国人の給料が比較対象の日本人より低い状態で申請したことはありません。差の理由を説明して補正を重ねるより、最初から同等以上に設定するほうが、結果として認定までの期間を短くできます。
比較できる日本人がいない場合
同じ職種の日本人技能者がいない場合は、次のいずれかを根拠に、外国人の給料が妥当であることを示します。
- 賃金規程・就業規則:経験3年程度(または5年程度)の人に支払うべき給料の額を示します。原則として、労働基準監督署に届け出たものに限られます。
- 統計資料:厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」から、該当する都道府県・建設業・経験年数の賃金水準を参考にします。
ただし、当事務所の経験では、賃金構造基本統計調査の数字は高めに出る傾向があります。この数字に合わせると、外国人の給料が御社の日本人社員より高くなってしまうこともあるため、あまりおすすめしていません。
比較できる日本人がいない企業様は、経験年数に応じた給料を定めた賃金規程を整備しておくことが、受入れ準備の一つになります。ただし、規程を届け出ればそれで足りるわけではなく、規程の内容が実際の給与と合っていることや、定めた金額に合理性があることも求められます。
那須行政書士事務所のサポート
当事務所では、建設特定技能受入計画の作成・代理申請にあたり、比較対象とする日本人の選定から、報酬額の説明書・経歴書の作成まで対応しています。「誰を比較対象にすればよいか分からない」「比較できる日本人がいない」という段階からご相談ください。
参考資料(2026年10月確認)
国土交通省「建設特定技能受入計画における報酬額の認定について(通知)」(令和4年3月28日)
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001473553.pdf
国土交通省「建設特定技能受入計画のオンライン申請について【新規】」(2025年4月4日)
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001603430.pdf
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(e-Stat)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?tclass=000001229518&cycle=0
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