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建設特定技能の給料は、なぜ「最低賃金の1.1倍」以上なのか?自社に必要な月給の計算方法を行政書士が解説
2026.10.22
特定技能ビザ
はじめに
建設分野で特定技能外国人を受け入れる場合、国土交通省の「建設特定技能受入計画」の審査で、給料に「最低賃金の1.1倍以上」という基準が設けられています。下回っていれば補正を求められ、直せなければ受入計画は認定されません。
企業様からは「なぜ1.1倍なのか」「結局うちはいくら払えばいいのか」というご質問をよくいただきます。本記事では、この2つにお答えします。
※本記事は1号特定技能外国人を対象としています。最低賃金は令和8年度の改定額で計算しています。
なぜ「1.1倍」なのか|経験者として受け入れるから
建設分野の特定技能1号外国人は、一定の技能と実務経験を持つ人材として受け入れられます。技能実習2号を修了した人であれば、建設現場でおおむね3年の経験を積んでいることになります。
一方、最低賃金は、経験のない人にも支払わなければならない最低ラインです。3年の経験がある人に最低賃金と同じ給料しか払わないのでは、その経験を評価していないことになります。
国土交通省の通知(令和4年3月28日)も、1.1倍を下回る給料では「技能経験がその報酬額に反映されているとは認められない」としています。国交省の申請の手引きでも、ハローワークの求人票が「経験不問・月給25万円~」の会社であれば、特定技能外国人には「25万円に3年分の昇給を加算した額」が必要と説明されています。国交省自身が、特定技能外国人を「3年程度の経験者」として扱っていることが分かります。
つまり1.1倍とは、「経験者として受け入れる以上、未経験者の最低ラインに上乗せした給料を払うこと」を数字で示した基準です。なお、上乗せ幅がなぜちょうど10%なのかという算定根拠は、公表資料からは確認できません。
なぜ「全国加重平均」とも比べるのか|地方ほど注意
基準は、次の2つのうち「高いほう」の1.1倍です。
- 事業所がある都道府県の地域別最低賃金
- 地域別最低賃金の全国加重平均(令和8年度:1,177円)
通知は「どちらかを下回っていれば認定しない」としているため、両方を上回る、つまり高いほうが基準になります。
全国加重平均と比べるのは、大都市圏への外国人の集中を防ぐためです。国交省は制度の開始当初から、全国の賃金水準との比較も考慮するとしてきました。地方の会社が地元の最低賃金を基準に給料を低く設定すると、外国人は給料の高い都市部へ流れてしまいます。全国平均を下限にすることで、地方でも一定の水準を保たせているわけです。
令和8年度に地域別最低賃金が全国加重平均を上回るのは、東京・神奈川・大阪・埼玉・千葉・愛知・京都の7都府県だけです。それ以外の40道県は、全国加重平均の1.1倍(時給1,294.7円)が基準になります。地方の会社ほど、地元の最低賃金だけで計算して基準を下回るケースが多いのはこのためです。
自社に必要な月給の計算方法
必要な月給(所定内賃金)は、次の計算式で求められます。
(地域別最低賃金と全国加重平均の高いほう)× 1.1 × 年間所定労働時間 ÷ 12
年間所定労働時間は、年間所定労働日数(365日-年間休日)× 1日の所定労働時間 です。年間休日や1日の労働時間は会社ごとに違うため、必ず自社の就業規則と年間カレンダーで計算してください。
計算例:群馬県の会社、年間休日110日、1日8時間の場合
- 基準:群馬県1,120円<全国加重平均1,177円 → 1,177円 × 1.1 = 1,294.7円
- 年間所定労働時間:(365日-110日)× 8時間 = 2,040時間
- 必要な月給:1,294.7円 × 2,040時間 ÷ 12 = 220,099円以上
計算するときの注意点|比べるのは「所定内賃金」
基準と比べるのは総支給額ではなく、毎月無条件で固定的に支払われる「所定内賃金」です。次のものは含められません。
- 固定残業代・みなし残業代
- 皆勤手当、出勤日数に応じた手当
- 「資格を取得したら支給」など、条件付きの手当
- 扶養家族の人数や実際の通勤距離など、個人の事情で金額が変わる手当
手当の名称ではなく、支給条件で判断されます。
具体例:上の群馬県の会社で、基本給19万円、資格手当(保有資格に毎月定額)2万円、皆勤手当1万円、固定残業代3万円、総支給25万円を予定していたとします。
所定内賃金に含められるのは基本給と資格手当の21万円だけで、時給に直すと約1,235円です。群馬県の最低賃金の1.1倍(1,232円)は上回っていますが、全国加重平均の1.1倍(1,294.7円)を下回るため、このままでは認定されません。「地元の基準では足りているのに通らない」という、地方の会社に典型的なケースです。
また、最低賃金の発効日は都道府県によって異なり、受入計画の審査には1か月半~2か月程度かかります。改定予定の金額も見込んで、余裕を持った給料を設定しておくと安心です。
1.1倍は「下限」にすぎない
1.1倍を満たしても、それで終わりではありません。受入計画の審査では、同等の技能を持つ日本人と同等以上の報酬であることも確認されます。しかも、比較対象として選んだ日本人の給料にも、同じ1.1倍の基準が適用されます。比較対象の日本人の選び方については、別の記事で解説します。
那須行政書士事務所のサポート
当事務所では、建設特定技能受入計画の作成・代理申請にあたり、御社の就業規則・賃金規程・年間カレンダーをもとに、基準を満たす給与設定になっているかを申請前に確認しています。「この給料で受入計画が通るか確認したい」という段階からご相談ください。
参考資料(2026年10月確認)
国土交通省「建設特定技能受入計画における報酬額の認定について(通知)」(令和4年3月28日)
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001473553.pdf
国土交通省「建設特定技能受入計画のオンライン申請について【新規】」(2025年4月4日)
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001603430.pdf
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